新型万能細胞「STAP細胞」論文で理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーの研究手法に不正があったとして、同研究所の野依良治理事長は4月1日、記者会見して謝罪、論文の取り下げを正式に勧告するなどと説明した。
*** 「小保方問題」は起こるべくして起きた ***
同時に小保方氏の処分も検討するという。論文の共著者である笹井芳樹氏(理研発生・再生総合研究センター副センター長)と若山照彦氏(山梨大学教授)については、研究不正は認められなかったとした。
理研の対応を見ていると、小保方氏個人の「不正」として片付けようとしているように映る。果たしてこの問題は、有識者らが指摘しているように小保方氏の研
究者としての「倫理観の欠如」から発生したのだろうか、あるいは小保方氏の研究手法を早計に「不正」と断じていいのだろうか、といった疑念がわいてくる。
筆者も文系ながら、かつて大学院の博士後期課程で学んで学位論文(ベンチャー論)を書こうと試みていた時期があり、国立大学法人でも2年間特任講師を経験
した。期間は短いとはいえ、アカデミックな分野での経験は多少ある。こうした経験も踏まえて、今回の問題を考えてみたい。
そこで筆者は、理研のベテラン研究者に、なぜ、この問題が起きたのかを聞いてみた。匿名を条件に率直に語ってくれたところからは、予想通り、理研という組織や日本の科学技術政策の「欠陥」などが浮かび上がってきた。
その研究者によると、「小保方問題」は起こるべくして起き、小保方氏は理研という組織の「犠牲者」といった側面がある。
*** 独法化で理研は変貌してしまった ***
まず、理研が独立行政法人化されたその弊害も、「小保方問題」の背景にあるようだ。独法化とは、その名の通り、法人=会社になることである。
税金など公的資金で運営されるのではなく、資金調達や組織マネジメントの手法を企業化することで、かつては行政が担っていた分野を民間的に効率重視の運営
に変えていくために、「橋本行革」の際に導入された制度だ。そこで働く職員も一部の特定独立行政法人を除いて公務員扱いではなくなる。
税金など公的資金を使ってしかも不効率な運営をする官業から民間的経営に移行していくその発想は肯定的にとらえてもいいだろう。しかし、理研のような組織が独法に向いているのかという点は考えなければならない。
独法化によって理研は、目標を掲げたり、成果を性急に求めたりする組織に変貌した。企業が成果を求めるのと同じ考えである。この結果、「競争的資金」などと呼ばれる補助金が得やすいライフサイエンスなどの限られたテーマに偏る傾向になったという。
理研に限らず、大学や研究機関では研究資金などお金を獲得しやすい研究に傾く風潮が強まっている。分かりやすいジャンルで言うと、バイオ、ナノテク、再生
医療、福祉関連などの分野である。大学でも看板だけ変えて、農学部を「バイオ」と付く名称の学部に変更しているのも世間受けを狙ってであろう。
この結果、科学技術バブルと言われほど研究資金が潤沢にあるなかで、研究が特定の分野に偏りつつあるのが実情だ。そもそも優れた研究や革命的な発明は誰もが目を向ける場所からは生まれない。福沢諭吉の言葉にあるように「異端妄説」なのである。
最初は誰もが見向きもしなかったことや、あるいは権威からは否定されていたようことからは新しいものは生まれる。だから、本当のイノベーションも、補助金が得やすいテーマからは生まれにくいだろう。taobao代行
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